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大前研一「ニュースの視点」
2009/01/09
〔大前研一「ニュースの視点」〕
KON243 天然ガスをめぐるロシアと欧州のかけ引き~両者にとってプラスとなる関係をいかに築くか~大前研一ニュースの視点~

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ロシアエネルギー情勢
ガスプロム
ウクライナへの提供を停止
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●背に腹は変えられない状況に陥っているガスプロム

 1日、ロシアのガスプロムは、天然ガス料金の支払いをめぐり
 交渉していたウクライナに対してガスの供給を停止しました。

 またメドベーチェフ大統領は先月22日、ベラルーシのルカシ
 ェンコ大統領とモスクワで会談し、今年のガス輸出価格を協議
 しました。

 西欧諸国・バルト3国・ウクライナ・ベラルーシのそれぞれに
 対するロシアからの天然ガス輸出価格の推移を見ると、いずれ
 も千立方メートル当たりの値段は年々上がってきていることが
 分かります。


※「ロシアからの天然ガス輸出価格(1)」チャートをみる。
   → 


 西欧諸国に対する輸出価格は2005年に250ドルを突破し、2008
 年には350ドルを越える水準にまで達しています。私はこの値
 段は適正価格よりも高い設定だと思っています。

 天然ガスに限らずエネルギー全体の値段が下降している昨今の
 状況からすれば、ロシアの天然ガスももっと値下げして然るべ
 きだからです。

 しかし、依然としてロシアは西欧諸国に対して強気の姿勢を崩
 していません。

        *     *      *

 逆に、エストニア・ラトビア・リトアニアの旧ロシア領である
 バルト3国に対しては、2007年以降の値上げ交渉が上手く行か
 ず、3カ国平均の輸出価格は250ドルに届かない水準に押さえ
 込まれています。

 また、2005年のガスプロムとベラルーシ政府によるガス供給に
 関する契約更改以降、ウクライナに対する輸出価格は上昇の一
 途を辿っています。

 親ロ的な立場を貫くベラルーシは今日に至るまで最も低い価格
 水準を維持していますが、ガスプロムの金欠状況から考えれば、
 今後はベラルーシに対する値上げも十分可能性があると思いま
 す。

 今回、ロシアは1月1日からウクライナに対するガス供給をス
 トップさせましたが、これはロシアとウクライナの政治的な関
 係が悪化したからだけではなく、資金的にガスプロムが追い込
 まれているからだと私は見ています。

 罰金を含むウクライナ側のガス滞納料金は約20億ドルに上り、
 まだ15億ドルしか支払われていません。ガスプロムは背に腹
 は変えられないという状況になっているのでしょう。


●将来的には、300ドル~350ドルで落ち着く

 客観的に見てウクライナはかなり厳しい状況に追い込まれてい
 ます。すぐに延滞金を支払ってロシアと和解する可能性は低い
 でしょうから、文字通り今年は寒い冬を迎えざるを得ないでし
 ょう。

 では、天然ガスの価格はいくらで落ち着くことになるでしょう
 か?


 先に結論を言ってしまうと、私は300ドル~350ドルに落ち着
 くと見ています。そしてこれはウクライナに対するだけではな
 く、西欧諸国・バルト3国・ベラルーシなども含め、全体に対
 して300ドル~350ドルという共通の適正価格になっていくと
 思っています。

 ロシア側の言い分は、ウクライナはEUに加盟したいと考えて
 いるのだから、他のEU諸国(西欧諸国)と同水準の天然ガス
 輸出価格を適用するというものです。

 一方のウクライナは、元CIS・元ロシアという意味ではバルト
 3国と同じ水準が適当だと主張しているわけです。両者の差額
 は、西欧諸国への販売価格「418ドル」・ウクライナが主張して
 いる販売価格「235ドル」で、「183ドル」になります。


※「ロシアからの天然ガス輸出価格(2)」チャートをみる。
→ 


 私が300ドル~350ドルで落ち着くと予測しているのは、ロシ
 アが次のように考えると思うからです。

 まず第1に、ウクライナがバルト3国と同水準を求めるならば、
 バルト3国への輸出価格も値上げしてしまえば良いということ
 です。

 バルト3国はすでにEUにも加盟しているので大義名分も立つ
 でしょうし、ガスプロムにとっての資金難対策として効果的で
 す。

 第2に、逆に西欧諸国に対しては、他のエネルギー資源の価格
 との兼ね合いから考えれば値下げせざるを得ない状況です。現
 在の418ドルから350ドルくらいまで値下げするのは妥当なラ
 インだと判断するのではないでしょうか。

 結果として、西欧諸国・バルト3国・ウクライナ・ベラルーシ
 のそれぞれに対して別々の輸出価格を設定するよりも、全体と
 して300ドル~350ドルに落ち着ける方がシンプルですし、ロ
 シアとしては資金を確保する意味でも効果が高いでしょう。

 そしてこれを実現するためには、ロシアとバルト3国・ウクラ
 イナ・ベラルーシの間に欧州が政治的に介在することが必須だ
 と思います。

 例えば、欧州諸国は天然ガスを使用しないという政治的な動き
 を見せることも有効でしょう。欧州側にしても結果的には自分
 たちへの輸出価格の値下げにつながることですから積極的に動
 いても損はないと私は思います。

 最終的に300ドル~350ドルに落ち着いても、ベラルーシ・ウ
 クライナにとっては厳しい状況でしょうが、それでも納得でき
 ないならば、天然ガス以外の他の燃料を使うという選択肢以外
 に道はないかも知れません。



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