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大前研一「ニュースの視点」
2009/04/24
〔大前研一「ニュースの視点」〕
KON261 世界の新自動車業界勢力図~トヨタVSフォルクスワーゲン~大前研一ニュースの視点~

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独フォルクスワーゲン
第1四半期の販売台数
トヨタ抜き首位の見通し
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●幅広い車種を揃えるフォルクスワーゲンが、トヨタのライバル

 17日、独フォルクスワーゲンは、第1四半期の世界の販売台数
 は前年同期比11%%減の約139万台となったと発表しました。

 独政府の販売奨励策が寄与し、主要市場での需要が堅調となっ
 たことが背景にあります。第1四半期の自動車販売台数でトヨ
 タ自動車を抜き、首位となる見通しです。

 数ヶ月前、トヨタが販売台数でGMを抜いて世界一になったと
 きに私が説明したことが、まさに現実になってきました。

 GMを抜き世界一になったトヨタにとって、今後世界一を競う
 ライバルはフォルクスワーゲンになる可能性が高いということ
 です。

 もちろん、未だ第1四半期だけの結果ですから今後の結果は分
 かりません。しかし、フォルクスワーゲンがトヨタにとって戦
 いづらい相手であることは間違いないと私は見ています。

 その根拠は、日米欧の主要自動車メーカーの資本関係を見ると
 分かります。

 フォルクスワーゲンはポルシェを最大の株主にしつつ、チェコ
 のシュコダ、スペインのセアトという低価格車を得意とする会
 社と、アウディ、ベントレーといったハイエンド車を得意とす
 る会社を持っています。

※「日米欧の主要自動車メーカーの資本関係」チャートをみる
  

 トヨタがGMを追い越したときには、GMの車よりもトヨタの
 車の方がオールラウンドでカッコイイという印象がありました
 が、相手がフォルクスワーゲングループとなると「カッコイイ」
 という意味では、比べるのすら難しい気がします。

 例えば、トヨタのレクサスは良い車ですが、ベントレー、アウ
 ディ、ポルシェとは比べてしまうと高級感では見劣りしてしま
 うかもしれません。

 また、フォルクスワーゲンは低価格車の市場でも強さを見せて
 います。チェコのシュコダ、スペインのセアトを保有しつつ、
 さらに中国市場ではナンバーワンになっていますし、ロシアを
 始めとする途上国への進出も抜かりはありません。

 一方、トヨタは2008年度の連結販売台数のうち、約60%を日米の
 2カ国が占めており、新興国市場の開拓に課題を抱えています。

 ポルシェ、ベントレーというハイエンド車から、セアト、シュ
 コダといった低価格車までカバーするラインアップは強力です。

 フォルクスワーゲングループが持つ車種の広さはトヨタにとっ
 て大きな脅威であり、今後の課題の1つになると思います。


●トヨタ、フォルクスワーゲン、そしてフィアット。「2強+1」の勢力図へ

 今後、世界の自動車業界の勢力図は大きく塗り変わっていくと
 思います。米ビッグスリーの時代は終わり、トヨタとフォルク
 スワーゲンを中心に、フィアットが食い込んでくるような構図
 になるのではないかと見ています。

 フィアットはクライスラーの買収を検討しているようですが、
 今後さらにGMやオペルのような会社を買収していけば、かな
 り大きな規模に成長する可能性があります。

 ただ、例えそうなっても、近い将来で見ればトヨタやフォルク
 スワーゲンには及ばないでしょう。

 フィアット傘下にはマセラッティ、フェラーリという超ハイエ
 ンド車がありますが、これらの市場は極めて小さいものです。

 トヨタ並みにミドルエンドの車のラインアップを揃えてくるよ
 うになると、世界のトップ争いができるようになるでしょうが、
 GMやオペルを買収するくらいであれば、トヨタやフォルクス
 ワーゲンにとって脅威になるレベルではありません。

 このように見てくると、トヨタとフォルクスワーゲンの一騎打
 ちという構図が浮かび上がってきます。

 しかし、実際のところ今のままではフォルクスワーゲンの方が
 有利だと私は思います。

 トヨタは平均的に非常に質が高い車を揃えていますが、例える
 なら「Jazzのような」あるいは「セクシーな」印象を与える車
 種が欠けています。

 以前、トヨタは1600万円ほどの価格でスポーツカーの販売を
 予定していましたが、先駆けて日産にスカイラインGT-Rを800
 万円で発売されてしまったせいなのか、未だ開発中とのことで
 発売されていません。

 一方のフォルクスワーゲンは、この分野にアウディ、ベントレ
 ー、ポルシェといった車種を持っています。

 トヨタはこれらの車種と互角に戦えるようにならなければ、最
 終的にフォルクスワーゲンに勝てる見込みも薄くなると思いま
 す。

 現時点において販売台数で抜かれてしまったのは、トヨタその
 ものが原因というよりも、ドイツなどの欧州の国が新車販売に
 対して強力な補助を実施したためですから、さほど気にする必
 要はないでしょう。

 この点について、欧州は見事に「心理経済学」を理解した対策
 を講じており、それが効果を発揮しています。

 トヨタをサポートするという意味でも、日本の役人や政治家は、
 ぜひ今の欧州を見習ってもらいたいところです。

 世界大不況を経て、自動車業界の勢力図は一変しました。トヨ
 タ、フォルクスワーゲン、そしてフィアットを中心に今後どの
 ような展開を見せていくのか注目していきたいと思います。





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